日別アーカイブ: 2018年9月20日

「官報」としての出雲国風土記  #8

風土記が人気薄である原因の一つは、「出雲国風土記」にあるのかもしれない。大和朝廷対出雲王権という古代史の人気トピックの中心地である上に、残存五か国の内で唯一ほぼ完全な形で残っているのだから、古代史に興味を持つ読み手の期待はいやが上にも高まるだろう。が、私見では残存五か国中もっとも退屈なのが出雲編なのである。

なぜ退屈か? 風土記は、朝廷の求めに応じて各国の事情を報告したもの(「」)であり、その集成として「官報」のような性質を持っている。出雲編は時代的に新しいので形式的に整っており(つまりは官報としての完成度が高く)、しかもそれがほぼ完全な形で残ったために、読み物としてはつまらないのである。

常陸国風土記を読んでいると、「以下略」と記されている箇所が多くある。何が書かれていたか気にかかり、省略があるのを残念に感じたものだ。ところが出雲編を読むと、「長江山。郡家こほりのみやけの東南五十里。水精みずとるたま(水晶)有り。/暑垣山。郡家の真東二十里八十歩。とぶひ(狼煙を上げるための施設)有り。/高野山。郡家の真東十九里」といった記述が延々と続くのに出会うことになる。 続きを読む