日別アーカイブ: 2018年12月5日

ラス・カサス、マーク・トゥウェイン、コダック  #23

ラス・カサス『インディオスの破壊に関する簡潔な報告』を読むと、スペインの中南米の原住民に対する残虐非道な扱い、数百万単位という虐殺の規模の大きさに呆然としてしまう。記録を残したからといって、スペインの罪が消えるはずもないが、これもまた書かれ、刊本となったからこそ言えることなのだ。

歴史に残されなかった虐殺は、古代から近現代に至るまで山ほどあり、私たちはそれらについて語ることができない。世界に冠たる大英帝国の所業について、ラス・カサスの記録に匹敵する書物は存在せず、そのため、北米インディアンやオーストラリアのアボリジニに、世界の植民地で、どんな酷いことをしたのか私たちは断片的に知るのみだ。20世紀にも非道は続いたというのに、その全体像を知ることのできる「簡潔な報告」はない。

ベルギー国王レオポルド二世は、アフリカのコンゴ植民地において、1880年代半ば以降の二十年ほどの間に一千万人以上の現地人を死に追いやったとされる。レオポルドは巧みな外交戦術で、列強のアフリカ支配の空白地だったコンゴを王個人の支配するコンゴ自由国に仕立てた。特産の天然ゴム採取のために現地人を酷使し、残虐行為や虐殺が頻発したことから、当時、世界的な悪評を浴び、作家・文化人も非難の列に参加した。マーク・トゥウェインもその一人で、「レオポルド王の独白」という短編を書いた。 続きを読む