日別アーカイブ: 2019年4月20日

壁の向こう側へ 「告白」(6) #49

アウグスティヌスが好奇心の人だったことは、「告白」を読めば明らかだ。なので、青年アウグスティヌスがマニ教を信じるに至ったことについても好奇心の働きがあった、と想像するのは許される気がする。さらに、キリスト教が好奇心を否定するが故に、彼は一旦キリスト教から離れたのだとまで言えば、さすがに妄想と叱られるかもしれないが(個人的にはあり得ると思っている)。アウグスティヌスは、聖書を批判する「愚かな欺瞞者たちの意見に同意」したのである。しかし、やがてマニ教の教師たちの無知に失望し、その教説が彼の知的好奇心を満足させなかったために、彼はキリスト教に回帰したのだった。

#24で、私は旧約聖書中の虐殺の記述に気分が悪くなって、読書を中断したと書いた。中公文庫版『告白』本文と註によれば、マニ教も旧約中で「人々を殺す」者が義人(正しい人)とされることを批判していた。ここでの義人とは主にモーセを指す。マニ教徒の批判に対するアウグスティヌスの聖書擁護の弁をみてみよう。 続きを読む