名前はあるが、実体はまだない

6月のある日の収穫

最近嬉しいことはあったかなあと考え、しばらくして思いついたのは、借りている菜園で収穫したジャガイモと枝豆がとびきり美味しかったことでした。うーん、何て小っちゃい。しかし、このおいしさの記憶には一切混じり気がなく、注意力散漫で雑念だらけの私にとっては実は希少な経験なのでした。

最近嬉しいことなんて書き出したのは、レワニワ図書館が壁に突き当たっているせいです。難所から抜け出す道が見つからず、つい悲観的な文章になりそうだったので、明るい話題から始めようと。それがジャガイモに枝豆とは我ながら情けない……いや、いや、これは決して悪いことではありません。

突き当たった壁は、身体的な不調とは無関係なのですが、それらが同時に発現したのは偶然ではないと考えそうになります。幾度もあった類似の過去の経験がそう思わせるのです。泣きっ面に蜂……でも、このところ目と頭の痛みが軽くなっています。この幸運を活かし、レワニワ図書館の一コーナーである「ネット図書館について考える」掲載用の文章を綴ることにします。今回のタイトルはこちらの文章に関係しています。近日中に、レワニワの図書館にも掲載します。

追記:下記記事中、右開き・左開きが逆転していたので訂正しました(9月12日)。

「ネットブック・プロセッサー(ブクプロ)」誕生?

レワニワ閲覧室はレワニワ図書館の核心部分です。度厚かましくも「図書館」と自称したからには、蔵書を充実させていくことは責務であり、そのつもりで閲覧室配架用の作品を用意していました。作品を蔵書にすることが簡単とは思っていませんでしたが、ここまで難渋するとも予想していませんでした。

そもそも蔵書をPDFにすること自体が妥協でした。版面が美しくなく、ダウンロードされてしまうのを、やむを得ないことと諦めました。そうやって数冊の「本」を製作しましたが、見開きで読めないことが不満でした。電子書籍も片ページが基本のようですが、こちらは便利来機能満載です。弱点の多いPDFだからこそ、せめて見開きにしたい……そう思って、挑戦しました。

縦書き文書を見開きで読める「本」にするには、ページを動かして再構成する必要があります。で、それができるはずのとあるPDF変換アプリを導入したところ、フォントが勝手にゴシック体に入れ替わっていました! 別のアプリでは文字と「 」などの符号が重なってしまいます。PDFは画面の見た目そのままを仮想的に「印刷」するものではないのか……? よく分かりませんが、違う時もあるみたいです。

ワードプレスのプラグイン(専用アプリ)FlowPaperは、横書き・左開きであれば割合簡単にPDF・見開きの「本」が製作できます。特別展示室の「鳥の女王」はこれを使いました。ニュージーランド製で英語前提のため、縦書き・右開きは想定されていませんが、これを操作してPDFで右開き、見開きで読める本を作ろうとしました。

FlowPaperは裏表紙から右開きにページをめくることもできます。なので、読者に最初に最終ページに移動してもらい、そこから右方向にめくってもらえば、右開きの本ができると考えたのです。しかし、これを実現するためにもページを入れ替える必要があります。PDFは諦め、ワープロ・アプリの原稿上でページを移動させることにしました。

そうしたらページの左右が逆転したり、右が奇数ページ、左が偶数ページになったり。試行錯誤したものの、ワープロ原稿のページ入れ替えでは、どうしてもノンブル(ページ数)が自動的に変更され、入れ替えがうまくいきません。右往左往しているうちに目と頭の痛みが悪化して、PC作業自体を続けられなくなったのでした。

というわけで、閲覧室の蔵書を増やすには、片ページのままで我慢するか、横書き・左開きの「本」を作るしかないのが現状です。振り出しに戻ったわけです。ePubに挑戦することも考えましたが、きちんとした形にするのは、素人にはやはり難しそうで躊躇してしまいます。今は書き下ろしで横書きの「絵本」を作ることを思案中です。

こういう状況に立ち至って改めて、「ネット上の本作りに特化したワープロ」こそがネット図書館の肝なのだと分かりました。こうしたワープロがなければ、ネット図書館はシミュレーションより先に進めません。

HTMLに依存せず、入力画面がそのまま「本」になるようなワープロを作り、その上で独自のアプリやビュワーの生態系をネット上に確立できれば、日本発の独創的なプラットフォームが誕生します。気宇壮大ですが、私にはこうして濁り江でゲロゲロ鳴く以外にできることがありません。許される限り、鳴き続けるつもりではいますが。

ここで「ネット上の本作りに特化したワープロ」に名前をつけます。何しろそれは「ネット図書館の肝」なのだし、だいいち「ネット上の本作りに特化したワープロ」と毎回書くのは格好も効率も悪い。

で、しばらく考えた結果、「ネットブック・プロセッサー」、略称は「ブクプロ」ということにしました。私一人が了解すればいいので、これで決定です。ジャンジャン。名前はできましたが、実体はまだありません。いつか実体ができるのでしょうか?