日別アーカイブ: 2019年9月30日

旧約聖書の凄さ(1) #52

#52は、「その本は、なぜ面白いのか?」の第52回という意味です。#51から随分長く中断していました。このブログはそもそもこの形で始まったのでした。

旧約聖書を読み続けるうち、とんでもなく凄い本だと思うに至った。これからその凄さについて記すつもりだが、原則的に宗教的な考察は含まない。私はユダヤ教、キリスト教の信者ではなく、別のどんな宗教の信者でもない。宗教を論ずる素養に欠けている。また、前にも旧約のある種の凄みについて触れたが、今回の考察とはほぼ無関係である。私は一冊の本が世界と世界史を作り出したことに衝撃を受けた。そのことを書きたい。

久しぶりの「その本は、なぜ面白いのか?」なので、旧約聖書が面白い本と言えるのか、最初に触れておこう。今回はほとんど退屈しなかった(名前の羅列や神殿建築物の詳細などは斜めに読む)。一方で、読み物として面白いかと問われると、肯定しにくい。旧約は面白く読むことができるが、その面白さは読者の側から働きかけることで得られる種類のものだと思う。

実際、旧約を読む道筋は難路である。整備された道で、美しい景色やスピードのスリルを楽しむようにはいかない。矛盾や不合理の数々、感情移入しにくい登場人物、馴染みのない自然、記述や挿話の繰り返し、一方で断絶も多く……ガタガタ道を、私の持っている版では、2段組2000ページ近くを踏破しなくてはならない。 続きを読む