レワニワ図書館の特別閲覧室に、『女神の肩こり』正式版を公開しました。横書き、見開きで読める「絵本」です。一から作り上げたオリジナル作品としては、もう何年ぶりか思い出せないくらい久しぶりのものです。
短く仕上げて、2月中にアップするつもりでしたが、途中の3日間、全く先に進めないほど難渋し、予定期日通りとはなりませんでした。短編小説と言っていい長さになったのも想定外でした。制作過程での予期しない展開、書けない時の苦しさやそれを乗り越えた時の安堵といったものを味わったのも、本当に久しぶりでした。
しかし、この作品を「本業」の小説であるとは考えていません。図像を前提とした「絵本」である上に、横書きであることも私のポリシーに反します。他のところで書きましたが、私の技術では横書きでないと見開きで読んでもらう形にできないのです。
いつかまた「本当の小説」を書きたいと念願しています。それがいつになるかは、まだ見通せません。その時には、前回記した「旧約聖書のような小説」も書ければと思っています。
以下、特別閲覧室で読める「後書き」の抜粋を貼っておきます。なお、冒頭の図像は、『女神の肩こり』に載せたアメリカ在住の陶芸家照山祥子(Shoko Teruyama)の一連の作品の中で、今回使わなかったものです。
思いもかけない作品ができてしまい、釈明をしたくなりました。誰に釈明しようとしているのかは不明ですが。
「女神が自分の創った世界の『校正』作業のために肩こりに悩まされる」というのが元のアイデアでした。
女神とその夫は、ギリシア神話のヘラとゼウスの「夫婦」をイメージしていました。このアイデア自体は、去年(2019年)の初夏から秋にかけてのある時、突然頭の中に降って来たのですが、ギリシア神話に子供時代から馴染んでいて、さらに近年ヘロドトスやホメロスを読んだことが源泉になったと思われます。
その時はごく簡単にメモをしただけで、実際に形にすべく取りかかったのは、今年(2020年)2月下旬のことでした。ところが、あに図らんや、書き出したら、ギリシア神話は吹っ飛んで、圧倒的に聖書の世界になってしまったのでした。ヘレニズムからヘブライズムへ!? しかも短いコメディーの絵本にするつもりだったのに、気づくと短編小説の分量を書いていました。
旧約聖書を読み続け、かつそれについて書こうと苦心惨憺した影響は確実にあるでしょう。はたまた、歴史の示すとおり、ギリシア神話より聖書の方が強いのだと考えてみるのも一興ではあります。新訳からの「引用」は読んでもらえば分かると思いますが、旧訳の方はわかりにくいかもしれません。自作解説みたいなことは野暮で嫌いだったはずなのに、今回はなぜかやる気満々。レワニワ書房通信のネタにする予定です。
作中、占いの場面は、アメリカのTV番組 “Maury Show”の”Jesus Mary and Joseph”のエピソードを参照しています。この動画はYouTubeで見ることができます。検索してみてください。