日別アーカイブ: 2021年1月1日

作者セルバンテスの発見  #68

私は影の中にいます

予定を変更して、今回は「その本はなぜ面白いのか?」の続き#68とする。このブログは舵のない船のようにさまよい続けているのだが、時々(私にとって)目の覚めるような発見という椿事が起きる。実は「模範小説集」の続き(5)を半分近く書いており、なお牛島信明氏に焦点をあてるようなことになって、葛藤が生じていた。

批判ばかりしているみたいで、と一人勝手に悩みつつ関連の文献を読んでいたら、突然もやが晴れて……いや、そうではない、もやの中にいるのは変わらないのだけれど、辺りが突然明るくなったのである(旧約聖書の時のもやが晴れる「発見」とは違う事態のようだ)。その後、いい湯加減のお風呂につかっているみたいなほんわかした気分になり、二日ほど何も書けなかった。その間、見たわけではないが、私はにやついていたと思う。

何が起こったのかうまく摑めていない。すごく単純な事態であるようにも思える。いま思いついたままに記せば、私はセルバンテスを発見したのかもしれない。斬新なセルバンテス像を見出したとか、そんな立派な話ではない。専らドン・キホーテに興味があったはずなのに、セルバンテスという作者が突然私の頭の中に入り込んで来たのである。それは、なぜドン・キホーテは面白いのか、なぜ面白さが謎であるのか、というブログのそもそもの問題意識と直かに結びついている。 続きを読む