前回の続きで、「驚くべき一行」から始めようとしたのだが、頭の中で整理がつかない。前回の更新後、気分が急降下して悩みこんだような状態に陥っていた。作者セルバンテスをめぐる探究を始めていいものか、それが問題だ。やりがいはあるだろう。しかし、いくつか文献にあたって、そこに突っ込んだら泥沼だと分かった。
ブログの趣旨からすると突っ込むのが正解だ。けれど、そうしたら小説を書く機縁はさらに遠のく。……独り相撲を取っているのだから、私が決めればいいことであって悩む必要はないはずなのに、この問題で頭をいっぱいになり、寝ても覚めても思考が堂々巡りしている。
書きながら考えるとしよう。他に方法を知らない。私が驚いたのは、以下のF・M・ビリャヌエバの論文(出典は後述)の[注]に引かれていた文章だ。「ミゲル・デ・セルバンテスは実際に、当時のヨーロッパの詩人や劇作家たちには滅多にありえないような活動、つまりビジネスに関わる経済活動において、この種の職業経験を持った、われわれの黄金世紀における、唯一の重要な作家であった」(ルイス・ラロケ・アリェンデ) 続きを読む