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ツルゲーネフとドン・キホーテ

Shoko Teruyama ©2020

国会図書館の遠隔複写はすぐには届かないと思われるので、カルデニオとハムレットの続きは後回しにして、ドン・キホーテ補遺が終わってから書こうと思っていた内の一つを前倒しします。主に翻訳にまつわる話題です。材料はツルゲーネフの「ハムレットとドン・キホーテ」

ツルゲーネフは、高校の現代国語の教科書で「あいびき」を読み、文章そのものに感動するという初めての経験をした作家です。もちろん二葉亭四迷訳。手許にある新潮文庫版は昭和46年9月19刷。浪人生だった時に東京の書店で購入したもと思います。四迷「浮雲」は何がいいのかよく分かりませんでしたが、四迷訳ツルゲーネフの文章は今読んでも感じ入ってしまいます。

研究社シェイクスピア辞典にはツルゲーネフの項があります。ツルゲーネフが「ハムレットとドン・キホーテ」の中で、人間をドン・キホーテ型とハムレット型に二分したことが、一時期影響力を持った現れのようです。ツルゲーネフは、自己の信念に従い、無垢で無私のドン・キホーテを称揚する一方で、懐疑的でエゴイスティックだとしてハムレットを批判しました。 続きを読む

春の雪とナボコフ

突然降り出した春の雪のすごさに呆然とし、新型コロナウィルスに凍えていた心がさらに遠くへと運び去られて、キーボードに指を置いたまま、ただ窓の外を見ていました。その後、花とか心とか考えている内に指が動き出したのは、たぶん西行法師のおかげです。

2月17日のブログに「『新型コロナ』で世界に激変の兆し……」と書きましたが、これが世界史的な変動であることはもはや明らかでしょう。単なる疫病のもたらす変化ではなく、ソ連崩壊以降、1990年代から続くグローバルな変化の到達点であり、さらなる新しい動きの発火点となるだろうという意味において世界史的だと考えます。

世界史のただ中にいるとは、実に落ち着かないもののようです。これはグローバル化の「主犯」ネットのせいでもあります。ついつい新型コロナ関連のニュースやトピック、数字を追いかけてしまい、たちまちの内に時間は飛び去って、頭痛と眼痛に襲われます。目覚めている間ずっと気分が暗く、眠っても悪夢に悩まされます。「やる気満々」だった『女神の肩こり』の「自作解説」は、心と一緒に遠くへ旅立ってしまったようです。 続きを読む