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井上靖『天平の甍』に驚く

 風土記の私訳を始めようとして、そういえば井上靖の「天平のいらか」はこの時代の遣唐使を描いたものだっと思い、何かの参考になればと書店に向かいました。このブログにおいて風土記関連で触れた人物中、藤原宇合うまかいと山上憶良は遣唐使でしたし、春日蔵首かすがのくらのおびとおゆ老も唐ではないものの新羅へ留学していた可能性があります。

 元々井上靖に関心がなく、妻の実家に近い文学館に連れられて行ったのに何を見たのか記憶なし。最近、井上靖が話題になるようなこともなく、近所の大型書店に在庫がなくても仕方ないと思っていました。が、ありました。それどころか新潮文庫の棚に15、6冊、井上靖の小説が並んでいたのです。びっくり。

 棚の位置が近いので比較すると、井上ひさしの倍はありました。どちらも売れっ子だったわけですが、没年は1991年と2010年。20年も後に亡くなったひさし氏の方が多いのが自然に思えます。が、実態は……。何しろ、売れ行きにシビアなことで定評のある(?)新潮文庫です。井上靖は今もそんなに人気があるのかと再び驚きました。 続きを読む