最後の更新がいつだったのか、確かめるのが怖くて日付けを見ないようにしていました。勇気を出して(?)見てみると、4月19日。ほぼ半年前。四百字詰め原稿用紙換算で550枚くらい、単行本だと400ページを超える部厚い本になりそうな分量の小説ができあがりました。この間、これを書く以外、食う寝る風呂に入る等を除けば、ほぼ何もしていません。
第一稿を脱稿したのは、2週間くらい前です。執筆中は小説のことしか考えなかったせいか、脱稿後にブログの続きを書こうとしても気後れし、なかなか着手できませんでした。今も変な緊張感があります。
一本の小説にこれほど専心したことはありませんでした。小説の続きを知りたくてたまらず、しかし自分が書かないことには先を読めないので、他のことをしたいと思いませんでした(ただし、ウクライナ情勢だけは追っかけていました)。
私は集中力が続かず、すぐ気が散ってしまう種類の人間なのですが、ここまで小説に専念してしまうと、書こうと思えばすぐに頭が執筆モードに切り替わり、その世界の中に入って行くことができました。自分が何を書こうとしているのか、人物も舞台も展開も何もかも、書きながら発見しました。こうなると人任せに執筆している感じで、小説を書くことは快楽に近いものになりました。
だからといって、小説の出来がいいとか、他人が読んで面白いものになったとか、それは全く分かりません。当たり前です。でも、書き上げるまでの間は相当に、そして今も少し、気分が良いのです。思いもかけない小説を書き上げました。しかし、同時に、実に全く私らしい小説であろうかとも思われます。
タイトルは『宮殿のアルファベット』。前回ブログに記した大きな構想の第一回にあたります。これから二ヶ月くらいかけて自力で電子書籍にするつもりでいます。下は、小説の本題に入る前の「序文」 です。
古代メソポタミアでは、紀元前二千年紀(紀元前二千年から千年)後半、楔形文字を共通の文化とする都市国家が群雄割拠していた。ユーフラテス川下流域のバビロンが最もよく知られているが、中流域にもバビロンと並び称される都市国家があった。国王の住む宮殿近くの書記学校には、楔形文字を習得し、王宮の書記になることを目指す若者が集まっていた。しかし、私たちの主人公は他の生徒たちと少し違っているようだ。