シェイクスピアは、『ドン・キホーテ』の登場人物カルデニオにハムレットの面影を見いだしたのではないか? それが昨年1月に私の立てた問いだった(#29と#33を参照)。答えを見つけようと、まずこの疑問に関わる著作や先行研究がないか捜した。吉田彩子先生(#33参照)にメールで文献を教えていただくなどして、スペインの側からの問いかけはないだろうという判断に至った。
では、イギリス側からはどうか? なさそう、というのが現時点での答えである。となると、カルデニオとハムレットを結びつけたのは、私の妄想なのだろうか? そうとも言えない、という結論にたどり着く探究の道行きについて、これから語りたい。私にとって、実にとんでもなく面白い旅だったのである。
シェイクスピアに関しては、汗牛が充棟したビルで大都市を形成されるくらい多くの文献・研究がある。そうした中、「カルデニオ」は研究の中心街からはやや遠いものの、それなりに人の出入りの多い一棟である。シェイクスピアの作品中「カルデニオの物語」は上演歴は確かだが、台本の残っていない「失われた劇」であり、これを発見しようと追求・探究が長く行われて来たのである。まずそのことを私は知った。 続きを読む