日別アーカイブ: 2021年4月11日

シェイクスピアの歴史劇

物忘れや変な思い込みがひどくなったと言うと、前からそうだったと妻に返されます。主観的にはこの数年の変化なのですが。『ハムレット』は、福田恆存訳(新潮文庫)を繰り返し5回くらい読んだと記憶していました。ところが、カルデニオ-ハムレット論を書くために小田島雄志訳(白水Uブックス)を買い、初めて読んだ気でいたら、後で同じ本が書棚の結構目立つ場所にあるのを発見しました。付箋つきで。

野島秀勝訳(岩波文庫)も、やはり付箋つきで書棚に収まっていました。さすがに、同じ訳ばかり5回も読んだわけではなさそうです。しかし、福田恆存訳を何度か読み返したのも事実です。その都度、前に読んだ記憶が消えているのに驚いたことをよく覚えています。シェイクスピアの凄さを毎回新鮮な気持ちで味わえるので記憶力が悪いと得だ、と強がっていたものでした。

先日、福田恆存訳『リチャード三世』(新潮文庫)を買いました。これもすでに家にありました……積ん読でしたが。英国王の名を冠したシェイクスピア史劇は縁が遠かったのです。今回、松岡和子訳『ヘンリー四世』(ちくま文庫シェイクスピア全集31)をひもとくと既視感がありました。その源は山口昌男、高橋康也などの著作に出て来たフォールスタッフに関する記憶の残滓のようです。読んでみて、史劇を敬遠していた理由がわかりました。 続きを読む