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風土記のために万葉集に寄り道  #74

ようやく風土記の補遺の続きを書くことができる。セルバンテス-シェイクスピアの時ほど態勢を整えたわけではないが、深入りすれば切りがないので準備はここまでとする(補遺と言うには長いので、別のタイトルをつけることにした)。そう決めた後、先日補遺の続きを断念することになった理由が腑に落ちた。私は「作者」について調べた上で、関連する歌や漢詩にあたればそれですむと思っていた。しかし、別の難問が水面下に隠れていて、そこで座礁したのだった。

作品の鑑賞という問題が、私には見えていなかった。好みを言うだけなら、どう読もうと勝手だろうが、私は常陸国風土記の特別な長所について述べたいのである。となると、その「作者」候補者の位置づけや 、彼らの作品がどう読まれて来たかについて、ある程度は押さえておく必要がある。遠い昔に書かれたものを読み、楽しむことで、私はこれまで概ね満足していたのだった。

しかし、補遺で解こうとした問題は、こうした無為の楽園から一歩踏み出さずには解決できないものだった。となると、高橋虫麻呂や春日蔵首老かすがのくらのおびとおゆの歌が採られた万葉集の全体と取り組む必要があるのだろうか? そうすべきかもしれないが、短歌と縁が薄い私には難しい。そこで、ハムレット論に深入りする代わりにスティーヴン・グリーンブラットを案内役としたように、万葉集についてもガイドを立てて導いてもらうことにした。 続きを読む