日別アーカイブ: 2019年4月5日

元不良の教師 「告白」(3) #46

アウグスティヌスの表現の見事さについては、例をいくらでも挙げることができる。しかも、その文体と彼の人間的な魅力とは一体のものとなっており、「告白」という書物を読み応えのあるものにしている。いくつかピックアップしてみよう。

故郷の町で教師を始めた頃、彼は「自分の魂の半分」と語るほどの親友を得たのだが、その友人は突然の病で亡くなってしまう。友人の病と死をめぐる記述には凶暴なほどの悲しみが宿っている。しかし、アウグスティヌスの真骨頂は、その悲しみを薄れさせる「時」について語る時に発揮される(時間論は彼の中心的な探究テーマの一つである)。

「時はむなしくやすんでいるのではなく、なすこともなくわれわれの感覚をとおして過ぎさってゆくのでもありません。それは心のうちに不思議な業をなすのです。どうでしょう、時は日に日に来たり、去ってゆきました。来たりまた去りながら、私のうちに別の希望と別の記憶とをうえつけ、徐々に以前のさまざまな種類の快楽で私をつくろい、先のあのかなしみはこれらの快楽に道をゆずってしだいに消えてゆきました」 続きを読む