日別アーカイブ: 2019年10月21日

旧約聖書の凄さ(4)  #55

購入した、あるいは家にあった旧約関係本

神によってエジプト脱出の使命を与えられたモーセは、神威を示すためにファラオの前で杖を蛇に変えてみせた。するとファラオお抱えの呪術師も、同じように杖を蛇に変えたのである。出エジプトは、「唯一神」の力によらずとも杖を蛇に変えることができるような、そんな大昔あるいは「昔々」に起こったのだった。だから、#25に書いたように出エジプトの証拠となる文書や記録がなくても、まあ仕方がないとしよう。

しかし、武勇を誇るダビデが建国し、ソロモンの時代に栄華を極めたと旧約聖書に記されるイスラエル王国についても、同様に聖書以外に「証拠となる文書や記録」が見つからないとなると事情が違う。1990年代になって「ダビデ」と記載のある碑文が見つかったのが唯一の「証拠」なのだという(しかも碑文の記述は旧約と食い違いがある)。エジプトからユーフラテス川に至る地域には、もっと昔の時代の遺跡がいくらもあるというのに。

こうして明らかになるのは、一つは旧約は史実を記した本ではないこと、もう一つは旧約時代のユダヤ人は群小民族の一つに過ぎず、ダビデの王国にしても地方の豪族が成り上がった程度のものだったということだ。前者についてはまた後で触れる。後者については、もちろん旧約に弱小民族だったという記述はなく、各種の聖書入門本にもそうは書かれていない。学術的な内容を含む本では触れられる場合があるが、目立たない書き方なので素通りしそうになる。私はそうだった。 続きを読む